紋様尊行会(加島一彦会長)では、去る11月15日(木)より17日(土)まで京都岡崎の日図デザイン博物館において、「西陣織『「紋様意匠図』の移り変わり」(吉川 進 作品展事業委員長)を開催いたしました。手作業で作られた「紋様意匠図」からコンピュータを活用した現代品までが展示され、会期中には約1000名の一般市民や関係者が訪れ、はじめて見る紋様意匠図の奥深さに驚嘆され、終日賑わいました。
今回の企画は、本年が紋様業者の祖、岡本尊行帯刀翁が創業されて350年にあたることから、その記念事業の一環として行われたものです。 このイベントは、「紋様意匠図」の歴史とその存在を数多くの人たちにご理解いただくことと、内に向けては、伝統技術の確かなる継承と先端技術の導入による新たなる創造を目指し、ひいては後継者への育成を図ることを目的として開かれたものです。
紋様業者の祖といわれ、民営の高級織物に応用して西陣機業の端を開いた岡本帯刀源尊行翁の生涯は、さまざまな謎に包まれ、詳らかにされないまま今日に至っています。 しかしながら、「井上流紋職由来記」には、萬治元年五月一日(1658)に井関七右衛門宗鱗より岡本帯刀尊行に紋技の秘伝を授け、紋職家として創業されたことが明らかな記録として残されていることは衆知の事実です。
西陣紋織の精華はいまや全世界の文化人によって賞賛の的となっていますが、上古以来わが紋織は官営か準官営となって、宮廷に秘伝されてまいりました。その秘伝を受け、さらに明の織法による工夫を加えたものを特権階級専用から一般庶民に開放し、ひいては西陣並びに全国の紋織興隆のきっかけをつくったのは、翁の力であることを何人もこれを否定できません。明織法による高級な紋織は翁の紋技によって織出され、その名声は頗る高いものがあり、民間における紋技の業者として紋屋と称して、その紋技の業を創めた翁の功績はまさにわが染織史上特記すべきものであるといえるでしょう。
爾来350年、我が業界はジャカード機の導入、コンピュータ化等々その時代の変遷とともに、これに即応した技術革新を克服し今日を迎えました。そして紋様尊行会設立50年を迎えた今年、紋様意匠図の淵源を尋ねることにより、そこから新しい方向性を見出し次代へ伝承することが、我々自身に課せられた大きな使命というべきものと考えます。
こうしたことから、紋様尊行会では今回の記念事業を「伝統と先進の調和」を理念に、紋様の原点を問い直し、次の時代の創造を目指そうという観点から開催されることとなりました。近年の著しい発達を遂げた技術革新の恩恵を受け、我々は、最新の製紋技術を保持することができ、業界に広く普及することとなりました。しかし、これらの歴史と伝統に立脚したものでなければならないことは言うまでもありません。
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| ピアノマシンによる紋彫に説明 |
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紋様意匠図の制作説明 |
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画像の修正処理 |
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今回の企画は、「紋様意匠図」の制作の変遷を分かりやすく理解できるよう配慮されて展示されているとともに、その目的を明確にするため、各々のジャンルに分けてコーナーが設けられていました。
大きく分類すると、@公共の施設に所蔵されている歴史的価値が認められる「紋様意匠図」並びにそれに関連する作品 A熟練技術者による伝統技法が駆使された「紋様意匠図」とそれに基づいて製織された作品 BIT技術によって初めて製紋可能となった作品(カラープリント)とそれに基づいて製織された作品 C若年就業者による創造性豊かな作品(カラープリント) D伝統産業の将来を予感させる、新しい技術伝承を提案する作品など約100点の作品が展覧されていました。
また、作品の展示のみに留まらず、「紋様意匠図」の制作工程の実演をはじめやピアノマシンによる紋彫工程やコンピュータによる画像処理ソフトを使った修正処理作業を公開するとともに、来場者に実際に手に触れていただくような配慮もあり、とくに、若い観客は紋様を描いたり、紋紙を穿孔するなど初めての経験に歓声を挙げられていました。
そして、2008年(平成20年)は、「源氏物語」が記録の上で確認されるときから、ちょうど一千年になります。この機会をとらえ、紫式部ら平安女性の偉業を讃えるとともに、「源氏物語」が宿す日本文化の美と思想を、あらためて広く分かち合い、後世に伝えていくことを目的として記念事業を展開されていることから、これに因んだ作品も出展されていました。
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